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大阪地方裁判所 昭和59年(ヨ)3317号

申請人

伊村次郎

右申請人代理人弁護士

橋本二三夫

村本武志

被申請人

財団法人機械電子検査検定協会

右代表者理事

久米田秀夫

右被申請人代理人弁護士

河合勝

森野實彦

主文

本件仮処分申請をいずれも却下する。

申請費用は申請人の負担とする。

理由

第一当事者の求めた裁判

一  申請人

1  被申請人は申請人を、被申請人の従業員として仮に取り扱え。

2  被申請人は申請人に対し、昭和五九年八月以降毎月二一日限り金二六万一五五四円の割合による金員を仮に支払え。

3  申請費用は被申請人の負担とする。

二  被申請人

主文同旨。

第二当裁判所の判断

一  次の事実は当事者間に争いがない。被申請人は電子機械等の検査、試験検定等を行うことを目的とする財団法人であり、主たる事務所を被申請人肩書地(略)に置き、その従業員は約六〇〇名である。被申請人は関西地域においては大阪府箕面市内に北関西事業所、大阪市内に関西事業所を置いている。申請人は昭和四五年一〇月一日、被申請人に試用され、三か月間の試用期間を経て、昭和四六年一月一日被申請人に正式採用され、北関西事業所所属の運転手として勤務していた。北関西事業所は従業員約四五名(管理職五名、検査員約四〇名)を有する事業所であり、申請人は採用時以来北関西事業所において通勤者の送迎、検査員の検査現場までの送迎及び測定器運搬のための車両の運転業務に従事してきたが被申請人は申請人に対し、昭和五九年四月一日付をもって特務職(自動車運転業務)を解き、関西事業所勤務(受託検査にかかる全般の業務)を命じた。配転先の関西事業所は大阪市天王寺区にあり、申請人が命じられた業務内容は鉄筋の熔接部分の強度検査の補助及び鉄筋の束を地下一階にある検査場まで運搬する現場作業である。申請人は被申請人の右配転命令に対し、これを不服として拒否したが被申請人は配転拒否を理由に、申請人に対し、(1)昭和五九年五月二一日付一か月分賃金に対する一〇分の一の減給処分、(2)昭和五九年六月六日付一週間の停職処分の各懲戒処分を行ったが被申請人は申請人に対し昭和五九年七月三一日付で、申請人の無断欠勤を理由に懲戒解雇処分を行った。

二  配転命令の効力について

1  当事者間に争いのない事実及び疎明資料、審尋の結果により一応認められる事実は次のとおりである。

(一) 被申請人職員就業規則二六条は、その一項で、「協会は、業務上の必要があるときは職員の職種変更、転勤又は配置転換を行う。」と規定し、同条二項で、「前項の異動を行う場合は、協会は予め本人の事情を充分考慮して行う。」、同四項で、「異動を命ぜられた場合は、職員は正当な理由がなければこれを拒むことができない。」と規定しており、また被申請人とその労働組合との労働協約一三条で右と同内容の規定をしている。そして、被申請人の場合、職員に対する懲戒はその該当事由があればその判断において直ちに懲戒処分に及ぶことができるというものではなく、右就業規則七二条ないし七九条、右労働協約二四条ないし三一条によって被申請人が職員に懲戒に該当する行為ありと認めたときには、被申請人側及び労働組合側が各一〇名以内の同数の委員をもって必要の都度構成された懲戒委員会にこれを付議することができるにすぎず、懲戒委員会が懲戒を決定したとき、これに従って被申請人において懲戒処分をなし得るという制度になっている。

(二) 申請人は、被申請人から、その担当すべき業務内容につき、運転業務の他測定その他の雑仕事の補助等もある旨説明を受けたうえ事務員として試用された。そして試用当初の給与は、事務員としての月俸六万五〇〇〇円に職務手当(現業員手当)三〇〇〇円を加算して支給された。

(三) 申請人の業務内容は、(1)猪名川測定場への機器の運搬及び右測定場における検査補助業務、(2)検査員の出張及び通勤者の送迎、(3)測定器の運搬(引取・引渡)であったが、(1)の業務は、昭和五一年秋、測定場の廃止によりなくなり、(2)の業務のうち通勤者の送迎は、昭和四九年七月に廃止された。また、検査員の出張の送迎も、作業の能率化のため検査員が自ら運転することにより次第になくなった。(3)の業務は、測定器の引取・引渡業務を営業上の利便等の理由から検査員自らがするようになり、申請人が担当すべき業務としては昭和五八年九月になくなった。そして、昭和五八年一〇月以後は、申請人の担当する業務は、一日一度の郵便物の投函及び月に一度北大阪急行千里中央駅付近まで買物に行くことだけとなった。

(四) 配転先である関西事業所で申請人が担当すべき業務の具体的内容は、提検試料を運搬用台車に乗せ、エレベーターを使用して地下室の試験機の近くまで押して行き、右台車から右試料を取出して、これを試験機に取付けること及び検査終了後右試料を試験機から取りはずし、これを針金で結束して台車に乗せ、エレベーターを使用して運搬し、一階の業者収納棚へ入れることである。右地下試験室の作業境境について、圧接棒の強度テストの際の破断音は、瞬間的に大きな音量が出るが、同所での作業員は耳栓をする等によりこれをある程度柔げることができ、右破断の際の破片の飛散のおそれもほとんどない。そして、冷暖房装置は備っており、台車へ積み降しする圧接棒は一本当りの重さが約一・八キログラムであり、これを幾本か束ねてもその積み降しが苛酷な労働となる程のものではない。また、その作業員から右地下試験室の労働環境について苦情が出たことはない。

(五) また、申請人の北関西事業所での運転手としての勤務と配転先の関西事業所での現場作業員としての勤務を比較すると、通勤時間は若干長くなると推測されるものの社会通念上許容される範囲内のものであり、勤務時間及び休日の取り方は変りがなく、給料が減ることもない。

(六)

(1) 昭和五九年五月二一日付減給処分の経緯

被申請人は申請人に対し、昭和五九年四月二日、既に内示していた内容の辞令を交付しようとしたところ、申請人がその受領を拒否したため、口頭で右内容を伝達するとともに四月三日付で関西事業所に着任するよう命令した。しかるに申請人は右着任命令を無視したため、四月五日、同九日、同一六日各内容証明郵便にて着任を命じたが、申請人がこれに応じないため、就業規則七三条、労働協約二五条により同四月二四日付にて懲戒委員会に付議したところ、昭和五九年五月一五日付をもって懲戒委員会から審議の結果、申請人の行為は減給処分を相当とし、減給は一か月の一〇分の一とすること、同年四月五日以降は無断欠勤と認定すると決定した旨の報告を受け、被申請人は右決定した旨の報告に従い、申請人に対し同年五月二一日付をもって右減給処分をした。

(2) 昭和五九年六月六日付停職処分の経緯

被申請人は、右(1)の処分の後、改めて申請人に対し昭和五九年五月一五日及び同二三日、各内容証明郵便にて着任を命じ、また懲戒委員会により着任命令に違反し着任しないことは無断欠勤であり、従って四月五日以降無断欠勤と認定されていることを告知した。しかし、申請人は依然として着任しないため、被申請人が昭和五九年五月三〇日付で懲戒委員会に付議したところ同年六月四日付をもって懲戒委員会から審議の結果、申請人の行為は停職処分、期間は一週間を相当とすること、昭和五九年四月五日以降は無断欠勤と認定すると決定した旨の報告を受け、被申請人は右決定した旨の報告に従い、申請人に対し同年六月六日付をもって右停職処分をした。

(3) 昭和五九年七月三一日付懲戒解雇処分の経緯

申請人は右(1)及び(2)の各処分を受け、懲戒委員会が申請人の行為を無断欠勤と認定している旨告知されているにもかかわらず着任しないため、被申請人は無断欠勤を理由に昭和五九年七月九日付で懲戒委員会に付議したところ同年七月一七日付をもって懲戒委員会から審議の結果、申請人の行為は懲戒解雇を相当とする決定をした旨の報告を受けた。被申請人は右決定した旨の報告に従い、申請人に対し同年七月三一日限り懲戒解雇することを決定し同年七月二八日付書面をもって申請人に告知した。

2  申請人は、前記配置転換は運転業務から検査補助業務へという異職種への配置転換であると主張するが、運転業務は専門職性の度合が低いこと、前記採用時の経緯等に鑑みれば、前記配置転換は異職種へのものであるとまではいえない。また、機器の運搬等の廃止が申請人の上司への抗議に対する報復としてかつ申請人に退職を迫る方策として行われたものであるとの主張については、これを認めるに足る的確な疎明はない。

3  以上の事実によれば、被申請人が申請人に対し前記配置転換を命じたのは被申請人の業務上の必要から行われたものであって、被申請人の労務指揮権の行使として相当なものであるというべきであり、その他前記配置転換が権利の濫用にあたることを疎明するに足りる資料はないから、前記配転命令は有効であるといわなければならない。

三  被申請人は前記配置転換命令後も、異動に応ずるよう申請人を説得したが、申請人の意思は変らず、右命令に応じなかったことは、当事者間に争いがないが、被申請人が、前記就業規則及び労働協約の各条項に拠りなした申請人に対する前記減給処分、停職処分及び懲戒解雇処分はもとより相当であり、申請人はこれによって、被申請人の従業員としての地位を失ったものである。

四  それゆえ、申請人の本件各申請は、その余の点について判断するまでもなく失当として却下することとし、申請費用の負担につき民訴法八九条に従い、主文のとおり決定する。

(裁判官 辻本利雄)

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